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題目

小学校高学年における期待値の大小判断

概要

本研究では,学習者の期待値判断の実態をSieglerのルール評価アプローチを用いて捉えることから,小学校における確率教育への示唆を得ることを目的とした。実験は次の4つの視点から行い,確率値(P)と確率変数値(V)の2変数の符号化のしやすさとの関連を分析した。1つ目の視点は学年の差異との関連であり,一種類の課題で,第5学年に比べ第6学年の方が2変数を符号化しやすいことが示された。2つ目の視点は確率を規定する量の差異との関連であり,第5学年で連続量課題に比べ離散量課題の方が,PVの2変数を符号化しやすいことが示された。3つ目の視点は試行回数の差異との関連であり,第5学年,第6学年ともに,1回試行課題に比べ10回試行課題の方が2変数を符号化しやすいことが示された。4つの目の視点は,期待値判断の質的側面の検討であり,定性的推理から定量的推理への移行に困難性があることが示された。これらの結果から,小学校高学年における確率・期待値の教授方略として,頻度に着目させることの有効性が示唆された。


第15巻

第2号
著者
口分田政史
【キーワード】
期待値,確率,小学生,ルール評価アプローチ