機関誌の要約情報を掲載します

題目

中学生を対象とした日本史の授業の設計・実施と評価1

― 暗記科目からの脱却を目指して ―

概要

 本研究の目的は,学習者の「日本史=暗記科目」という認識を修正し,日本史の学習における論理的な思考の活用を促すことである。そのために,学習者らに論理的思考の獲得・活用を促す学習方略を開発し,20195月に私立中学1年生191名を対象として授業を実施した。調査の結果,中学生全員が日本史を暗記科目であると認識しており,単純暗記では回答できない問題では57.1%が誤答という結果であった。彼らに対し上記授業を実施し,論理的思考を促したところ,同様の初見の問題において,誤答者が 22.0%に留まった。これは,論理的思考を活用することで,未知の事象,単純暗記で対応できない問題について正答を導きうることを示す結果といえる。また,事後アンケートでも論理的思考の重要性に言及する回答が多く見られ,「日本史=暗記科目」との認識が修正されたことが示唆されている。その一方で,事後課題における応用的なものでは,資料に基づく論理的思考を用いることができず,暗記した知識に頼る回答も多く散見され,そのような思考法の獲得が学習者にとって容易ではないことも示唆された。


第17巻

第1号
著者
下司裕樹
【キーワード】
日本史,授業設計,教授ストラテジー,論理的思考