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題目

知識の道具的機能の教授が自己完結的推論の抑制に及ぼす効果

―― 四角形のルールによる図形分類課題を取り上げて ――

概要

佐藤・工藤(2015)は,三角型四角形(3頂点が一直線上に並んだ特異な四角形)の分類課題における大学生の推論過程を分析した。その結果,「四角形でない」とする直観的判断を保持しようとする傾向が強く,ルールをもとに「四角形だろう」とする仮説的判断から推論を展開することが困難であること,そのために推論が当初の直観的判断に合致した形でしか進まないこと(自己完結的推論)が明らかとなった。本研究では,仮説的判断の難しさを「未知の事例(新奇な事例)に対する知識の不使用」の問題として捉えなおし,大学生を対象に知識の道具的機能(知識は未知の事柄を予測するための道具であること)を教授することで,三角型四角形問題に対する自己完結的推論が抑制され課題解決が促進されるかどうかを検討した。その結果,知識の道具的機能の教授により三角型四角形問題の解決が促進されたこと,その効果は仮説的判断が成立した場合(佐藤・工藤,2021)と同等であったことが示された。このことから,知識の道具的機能に関して一般的な認識形成が可能であること,それによって新奇な事例に対するルールの適用可能性が高まることが示唆された。


第17巻

第2号
著者
佐藤 誠子
【キーワード】
自己完結的推論,知識の道具的機能,知識の使用,問題解決