機関誌の要約情報を掲載します

題目

「海の命」(立松和平)の質問紙内容とその効果

―― 定番解釈に代わるもうひとつの作品解釈の妥当性を生徒に問う ――

概要

 本稿は,文学教材「海の命」(立松和平)の質問紙内容とその効果について報告している。高校生36名を対象としてまず質問紙Ⅰで初読時の解釈を,次に質問紙Ⅱで新たな作品解釈の妥当性を問うた。質問紙Ⅱの内容は,「海の命」研究で定番化している全体解釈Ⅰ「太一の成長」「自然との共生」に代わる,全体解釈Ⅱ「父親との再会の喜び」(梶原,2018)に基づいて構想された。

 質問紙Ⅰ・Ⅱは,作品終盤の「おとう,ここにおられたのですか」の部分解釈に焦点を当てて,次の点を問うている。(1)質問紙Ⅰで,全体解釈Ⅰの下で定番化している【クエ=おとう】の部分解釈Ⅰがどの程度回答されるのか。(2)質問紙Ⅱで生徒は,部分解釈Ⅰに代わる【クエ≠おとう】の部分解釈Ⅱを妥当とするのか。(3)その他の本文三箇所の部分解釈Ⅱとともに全体解釈Ⅱを,生徒は質問紙Ⅱで妥当とするのか。この結果,質問紙Ⅱを通して解釈Ⅰから解釈Ⅱへの変容が,36名中13名(36%)に十分に,23名(64%)に不十分に認められた。

ここに,新たな解釈Ⅱは授業に持ち込んで生徒に問うことができる見通しが得られている。


第17巻

第2号
著者
梶原 郁郎
【キーワード】
「海の命」,全体解釈Ⅰ(成長・共生),全体解釈Ⅱ(再会),【クエ=おとう】の部分解釈Ⅰ,【クエ≠おとう】の部分解釈Ⅱ