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題目

大学生の「仮説形成」に及ぼす知識操作教授の効果

概要

アブダクションは「逆必ずしも真ならず」の警告に違反している点で,形式論理の規則から逸脱している。しかし、その論理的飛躍が仮説形成や発見の過程において重要な役目を果たすとされている。一方,知識表象を変形する認知的活動(知識操作)が問題解決にとって重要であるという指摘がなされており,なかでも「逆操作」がアブダクションと密接に関連している。そこで本研究では,知識操作に関する講義が大学生の仮説形成に及ぼす影響を検討した。参加者は知識操作に関連するトピックを含む教育心理学の講義の受講前後にターゲット課題と比較課題に解答した。ターゲット課題では「ピーマンの実が光合成する」という仮説について,比較課題では「4頂点中3頂点が一直線上にある図形は四角形である」という仮説について,参加者の判断を尋ねた。いずれも新奇な仮説であるが,前者は知識操作およびアブダクションと関連し,後者は関連しないものであった。その結果,ターゲット課題では新奇な仮説の形成が促進されたが,比較課題では促進されなかった。以上の結果より,知識操作に関する講義が大学生の仮説形成を直接的に促進する可能性が示唆された。


第18巻

第1号
著者
工藤与志文
【キーワード】
仮説形成,アブダクション,知識操作,大学生,講義