機関誌の要約情報を掲載します
題目
過去経験の妥当性を認める短い言語表現の挿入が誤概念反応のリバウンド抑制に及ぼす効果
概要
本研究では,学習者が示す誤概念反応のリバウンドをどのようにしたら抑制できるかを検討した。植松(2008)は大学生を対象に光合成に関する誤概念の修正を文章教材の提示によって促す研究を行った。そこでは,学習者の過去経験の妥当性を限定的に認める情報の提示がリバウンド抑制に有効であった。本研究では,学習者の過去経験の妥当性を限定的に認める短い言語表現である「大部分」の提示の有効性について検討した。「大部分」あり群(実験群)と「大部分」なし群(統制群)の比較では,実験群に誤概念反応のリバウンドに関して,誤概念反応数をゼロに近づける傾向が示唆された。しかし,全体的に両群に目立った差がなく,「大部分」という言語表現の挿入がリバウンド抑制に有効であったとは言えなかった。この結果から,植松(2008)の教材に記載されていた肥料や土に含まれる栄養についての説明や「ヤナギの実験と結果」の情報の重要性が明らかになった。また,「範囲画定」を短い言語表現で暗示的に伝える方法は教育効果が不十分であり,「範囲画定型ルール」として提示することの重要性とその課題が明らかになった。
巻
第18巻
号
第2号
著者
植松公威
【キーワード】
過去経験,誤概念反応のリバウンド,光合成概念,範囲画定