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題目
説明的文章の読解に及ぼす「観点」の影響
概要
本研究は,説明的文章の読解に及ぼす「観点」の影響を調べたものである。調査1では,被験者は,説明的文章について,要約文と意見文を書くよう教示された。要約文によって読解内容が,意見文によって観点が測定された。主な結果として,要約のIUと連接関係から,文章の拾い読みを行っている可能性のある読者が,全体の半数程度であることがわかった。また,適切に読解 を行った群の方が主旨をよりよく記述していたのに対し,不適切な読解を行った群では,道徳・教訓的などの不適切な観点を示す傾向があった。調査2では,被験者は,調査1と同じ文章について,著者の意図を回答するよう教示された。この課題によって,文章の理解を促進させることが意図された。結果として,適切な読解を行った群は6割未満であり,この課題に適切な読解を行わせる有意な効果はなかったことが示された。適切な読解を行った群は,不適切である群と比べ て,観点数が少なく,観点の質では,より適切であることが示された。これらの結果から,「説明的な文章の読解の不適切さ」は,「形式的・事実確認的な読 み」に失敗したために,読者が自分なりの不適切な「観点」,例えば「Moral Reading Schema:MRS」などを多用したことの結果として生じたと考えられる。

第4巻

第2号
著者
舛田弘子
【キーワード】
説明的文章,読解,観点,道徳的読解スキーマ(MRS)