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題目
小学校算数の図形学習における斜辺を用いた高さの同定方略の効果
概要
三角形や平行四辺形の面積の学習では,高さの理解が重要であるが,高さの同定を誤る児童は少なくない。そこで,本稿では高さの同定を促進するために,斜辺を用いる方略を考案し,その効果を検証した。斜辺を用いる方略とは,「図形の斜辺を見つけ,斜辺の一番上から底辺に垂直に線を引く」というものであり,この方略を用いることで,斜辺と高さを混同する誤りが抑制されることが予想された。また,斜辺を用いる方略を導入する際に,斜辺をハシゴ,底辺を地面と対応させることで,方略の理解が促進されると予想された。小学6年生を対象に,ほぼ同様の授業を2度実施した(授業1,授業2)。その結果,授業1・2の両方で高さの作図課題の正答率が上昇し,授業2では一部の求積課題の正答率も上昇した。また,授業の感想に記述された内容から,斜辺を用いる方略を使って同定することや,斜辺をハシゴ,底辺を地面と見なすことが有効であることが示唆された。一方で,授業で用いた課題との類似度が低い求積課題では,依然として「底辺×斜辺」という誤りが見られたことから, 方略の教示だけでは,抽象的な高さ概念を獲得するには不十分であることが示唆された。

第9巻

第1号
著者
蛯名正司
【キーワード】
高さ,平面図形,斜辺,同定方略,小学6年生