機関誌の要約情報を掲載します

題目
動機づけ構造を組み込んだ教授方略が協同学習における社会的関係性の変化に及ぼす効果
概要
本研究では,Maehr & Midgley(1991)によって提案された動機づけ構造の各下位次元(課題,権限,グルーピング,評価)を,授業実践に結びつけ,わが国の小学4年理科「もののかさと温度」の協同学習場面に適用した教授方略を考案した。授業実践を通して,導入した教授方略が,個人内における科学的概念の変化,及び個人間における学習行動の変化に,どのような効果をもたらすのかを探索的に検討することを目的とした。単元前後における動機づけの質問紙調査に基づく数量的分析,「粒子の熱運動」の保持概念に基づく記述分析,毎時間の授業過程における発話と行為に基づく解釈的分析の結果,以下の点が明らかになった。1)本授業で考案した教授方略は,粒子の熱運動の「科学的な概念(空気の温度が上昇すると,体積は増えるが質量は変化しない)」の獲得を促すことが示唆された。2) 参加への配慮と話し合いを保証する,自己評価の確認の基に相互評価による修正を行う,という教授方略の要素の機能は,社会的関係性の「友だちからの期待」を促すことが示唆された。

第10巻

第1号
著者
高垣マユミ,田爪宏二,中西良文
【キーワード】
教授方略,概念変化,社会的関係性,他者からの期待,理科の協同学習