機関誌の要約情報を掲載します

題目
科学の学習に及ぼす言葉の操作,科学者の体験,生活者の体験の影響
概要
科学法則の獲得に及ぼす①言葉の操作,②科学者の体験,③生活者の体験の影響を検討する目的で,光の直進性を主題とする実験を行った。①②③を実施する群,①②を実施する群,①③を実施する群,①のみ実施する群を設け,国立大学生を被験者とした。事前テスト時点では全被験者が直進性をまったく理解できていなかった。事後テストその他から,以下の点が明らかになった。 ⑴言葉の操作だけでは,学習の効果はまったく生じない。⑵言葉の操作と体験が実施されれば,体験の種類に関わらず,相関法則を用いる判断はできるようになり,単純な問題は,満点に近い水準で解決できるようになる。⑶生活者の体験,言葉の操作,科学者の体験が付加されるだけだと,因果法則を用いる論理操作はできるようにはならず,複数の法則の同時適用が必要な複雑な問題事態では,解決が極めて困難になる。⑷ごく一部の学習者に限っては,言葉の操作と科学者の体験が実施されれば,因果法則を用いる論理操作が可能になるが,複数の法則の関係を把握した上でそれらを同時適用することはできず,複雑な問題事態でも単一の法則に限って適用できる水準に留まる。

第11巻

第1号
著者
知久馬義朗,加納明里
【キーワード】
科学概念,言葉の操作,科学者の体験,生活者の体験,体験