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題目
「塩は水にとけない」-理科実験における「観察の理論負荷性」-
概要
本論文では,小3理科授業において,「塩は水にとけない」とい う事実誤認が生じた事例を報告する。当該授業では,重さの保存性に関するルール(出入りがなければ重さは変わらない)の理解を目標の一つとしていた。一連の理科実験では,発泡入浴剤を水にとかして,泡(気体)の発生による重さの減少を観察させた。さらに,塩を水にとかす実験で,とけても物の重さは変わらないことを観察させた。しかしながら一部の児童は,入浴剤がとけたので重さが減った,重さが変わらないのだから食塩は水にとけないと結論づけてしまった。これらの事実は「観察の理論負荷性」の観点から考察され,「とけると重さが減少する」という誤ルールを持った児童と授業者は互いに異なった観察行為を実践していた可能性が示された。

第12巻

第1号
著者
工藤与志文
【キーワード】
理科実験,観察の理論負荷性,重さの保存性,誤ルール,小学生