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題目

読解過程モデルに基づく高校英語の授業分析

概要
本研究の目的は,授業分析における読解過程モデルの利用可能性について検討すること,及び英文読解授業のプロセスが直線的なボトム・アップ処理であるのかを検討することである。授業における指導法の多くは個人の読解過程モデルに基づいて開発されているが,授業という読解指導においてこの読解過程モデルが展開されていることは検証されていない。また,英語教育学における授業分析の蓄積は少ないにもかかわらず,英文読解授業はボトム・アップ指導であるという指摘がある。本研究では,これらの問題意識に基づいて,高校1年生の3クラスの授業の逐語記録を読解過程モデルに基づいてコーディングし,授業分析を行った。その結果,3つの授業は全てトップ・ダウン処理とボトム・アップ処理が組み合わされて展開されていた。ここから,英文読解授業で行われている読解プロセスは,個人の読解過程モデルに即して解釈することができることを示し,英文読解授業がボトム・アップの指導ではないと結論付けることができた。以上から,これまで個人の読解過程モデルに基づいて開発されてきた指導法が,授業における読解指導においても効果が期待できることが示唆された。

第12巻

第2号
著者
野村幸代
【キーワード】
読解過程モデル,授業分析,英文読解,ボトム・アップ処理,トップ・ダウン処理