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題目

理科授業におけるルール学習の促進・抑制要因に関する検討

―小5「もののとけ方」の授業分析を通して―

概要
 本研究は,小学5年理科「もののとけ方」を対象に,授業におけるルール学習の成立条件を検討したものである。研究では,まず,教科書の問題点を踏まえ,①複数事例の使用,②ルールの典型性が高い事例の優先的使用,③実験操作とルールとの関連づけという3つの方針に基づいた授業プランを作成し,溶解ルールの理解が促進されるかを事後評価課題により検討した(分析1)。さらに,分析1で得られた結果について,授業過程を分析することにより,授業者の教授活動およびその背景にある授業者の教材解釈が児童の学習活動にいかなる影響を及ぼしたのかを検討した(分析2)。公立小学校5年生(66名)を対象に授業を実施した結果,授業プランの方針①の有効性は確認できたが,方針②及び③の有効性は確認できなかった。これらの結果について授業過程の分析を行ったところ,①の有効性は授業者による複数事例のカテゴリー化とそれによる推論を促す発問に負うところが大きいことが示唆された。他方,有効性が確認されなかった②③については,実験における定量的な確認の不十分さや,仮説検証のための実験としての側面の弱さが影響を及ぼしていた可能性が示唆された。

第13巻

第1号
著者
蛯名正司,佐藤誠子,工藤与志文
【キーワード】
もののとけ方,小学5年生,ルール学習,授業分析,アブダクション