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題目

視写を用いた学習方法によって文体は変容するか ―「1文の長さの平均」や「読点の付け方」に着目して―


概要

 複数の研究において,視写による学習は文章力を高めるのに有効な学習方法の1つであると論じられている。しかし,これらの研究においては,学習者が視写による学習を行うことによって,自分で文章を書く際の文体が変容するのかということについては明らかにされていない。

 本研究では,文章力に課題のある1人の大学院生が視写を用いた学習方法(視写と音読をセットで行う)を10ヶ月間行うことによって文章力を高めることができるのかについて検証するとともに,書き手の文体の特徴を示す「1文の平均の長さ」と「読点の打ち方」が,自分で書く文章においてどのように変容するのかについて調査を行っている。結果,調査対象者の大学院生の文章力は高まっていた。また,「1文の長さの平均」には変容が見られ,「読点の打ち方」には部分的な変容が確認され,当該大学院生の文体の一部が変容していることが明らかとなった。さらに,インタビューの結果から,当該大学院生は視写を用いた学習方法を行うプロセスで文体に関して様々なことを学んでいることも分かった。

 本研究の結果から,現在の教育現場に視写を用いた学習方法を導入することは有効であると考えられる。

第13巻

第1号
著者
江川克弘
【キーワード】
視写,音読,文体の変容 文章力