機関誌の要約情報を掲載します

題目

ルールと事例の論理構造理解がルール適用に及ぼす影響

概要
 ルールを教示された学習者がルール表象を形成した場合でも,そのルールを事例に適用できないことがある。本研究は,ルール表象を形成した学習者には2つのタイプ(タイプ1とタイプ2)があり,タイプ2の者がルールの適用に失敗することを明らかにした。「銅は電気を通す」という事例とともに「金属は電気を通す」というルールを大学生(N=74)に教え,ルール表象を形成したと考えられる対象者(N=39)を抽出した。このうち18名(62%,タイプ1)は,物質Aが金属であることが示された場合,Aの名前を知っていても知らなくても,「Aは電気を通す」という事例表象を成立させることができた。残り11名(38%,タイプ2)は,名前を知っている金属に即しては,それが電気を通すという事例表象を成立させることができたが,名前を知らないものに即しては事例表象を成立させることができなかった。ルール適用課題では,名前を知っている金属に関しては両者間の成績に差はかったが,名前を知らない金属に関してはタイプ2の成績がタイプ1より低かった。以上の結果は,ルールを広い範囲の事例に適用できるためには,その名前の熟知度(既知か未知か)に拘わらず,事例が等しくルールに支配されていることを学習者が把握しているかどうかが重要であることを示す。本論文ではこの把握のことを「ルールと事例の論理構造理解」と名づけた。

第14巻

第1号
著者
進藤 聡彦,麻柄 啓一
【キーワード】
ルール表象,事例表象,ルールと事例の論理構造