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題目

理科授業における操作可能なルールの教示が科学法則の初歩的な理解に及ぼす影響  ―質量保存則を例に―

概要

 本研究は,小学3年理科「物の重さ」を対象に,操作可能なルールの教示が科学法則の初歩的理解に及ぼす影響について検討するものである。授業では一貫して出入りルール(出入りがなければ重さは変わらない)を扱い,その操作により物の出入りを手がかりに重さの変化を予想したり,重さの変化から物の出入りを推測したりする活動が期待された。全10時間のプランを作成し,授業の結果ルールを適用した課題解決が促進されるかを事後評価課題により検討した(分析1)。さらに,授業過程を分析することで授業者の教授活動や教材解釈が学習者の学習活動にいかなる影響を及ぼしたのかを検討した(分析2)。公立小学校3年生37名を対象に授業を実施した結果,授業で扱った課題状況と類似した問題ではルールの適用が促進されたが,授業で直接扱わなかった課題ではそうではなかった。授業過程を分析した結果,授業者の発言はルールの裏操作と対偶操作に集中しており逆操作が欠落していたことが明らかになった。このような知識操作の偏りが「物の出入り」の意味を狭めてしまい,結果的にルールの適用を制限した可能性が示唆された。


第14巻

第2号
著者
佐藤誠子、蛯名正司、工藤与志文
【キーワード】
物の重さ,小学3年生,知識操作,ルール学習,授業分析